ネクストジャーニー 世界一周と自転車

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熊対策について

 北米編ではアラスカ、カナダと熊出没地帯を旅した。その際に得た知見をここに書いていこうと思う。

■基礎編

 ここでは熊の種類や現地で紹介されている熊対策について一般的な内容について私見を交えて述べる。

1.熊の種類と生息地
 北米の自転車旅行者が遭遇する熊は主にブラックベア。次点でグリズリーベアだろう。
 ・ブラックベア
   アラスカ、カナダ西部、アメリカ本土に生息。最もよく見る種。
   その名の通り体毛が黒い個体が主。が、稀に黒でない個体もいるようなので注意。
   後述するグリズリーベアと違い、うなじがこんもりしていない。
 ・グリズリーベア
   アラスカ、カナダ西部に生息。アメリカ本土ではイエローストーン等限られた場所に生息している。
   アメリカ開拓時代にはカリフォルニア州にもいたが乱獲により絶滅。
   こんもりしたうなじが特徴。好奇心が強く、危険と言われている。
 ・北極クマ
   極北に生息。まず遭遇しない。

2.熊への対処
 銃を所持していない旅人が熊へ対抗する手段はベアスプレーしかない。ベアスプレーには催涙ガスが充填されており熊に対して有効。護身用にも使えるので持っていた方が良い。アウトドア用品店でも購入できるがアラスカなどでは大型スーパーでも扱っているので量販店で購入した方が安く済む。なお、航空輸送は出来ないので注意。

 2.1 熊と遭遇した場合の対処行動
 ・熊を見つけたら
  ・気づかれていない場合
    静かに立ち去る。
  ・気づかれた場合
    落ち着いて行動する。叫んだり、突然動かない。
    熊に話しかける。自身が人間であり獲物ではないことを熊に分からせる。
    ゆっくりと熊から離れる。走って逃げない。
    熊に対し自身を大きく見せる。
    荷物を捨てない。(熊に襲われた場合、防御に使える為)ただし、一度熊に取られた荷物は諦めること。
  ・熊が近づいてきたら
    熊が完全にこちらを襲ってくるようであればベアスプレーで戦うしかない。
    ただし逆風の場合は使えないので注意。ベアスプレーは内容物が確実に熊の顔に命中するように少し下に向けて発射すること。(下方向に向ければ地面から反射を期待できる)
    死んだふりというのも有効だと書かれている場合もあるが微妙な気がする。

 2.2 熊と遭遇しないようにするには
 ・ノイズを出す
  熊に人間の存在を伝えるためノイズを出すことが重要。具体的には大声を出したり、歌ったり。熊鈴も熊出没地域では売っている。

 ・熊生息地でのキャンプ
   1:食事場所とテント場所を離す
    50m程度離すことが薦められている。推奨距離は地域によってまちまちで100ヤードだったり15mだったり場所によって変わる。要するにできるだけ離すことが良い。匂いによってテント周辺に熊を呼び寄せないようにするのが重要。
   2:食料は熊の手の届かない場所に保管する
    鉄製のフードロッカーや専用のキャニスタ、木に吊るすなどの方法がある。気に吊るす場合は地面から4m以上、木の枝から1.3m以上話す必要がある。

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熊出没地域でのキャンプ

画像は以下のサイトから引用

Safe travel in bear country

 

■実践編

 基礎編の内容を踏まえ、実際にやった対応について述べる。

1.熊への対処

 1.1 熊と遭遇した場合
  ・至近(10m程度)まで気づかなかった場合
   そのまま走り抜ける。道の傍の茂みがガサガサしていて、よくよく見ると熊だったとか、そういうことが何度かあった。そういった場合、止まらずにそのまま走り去ることにした。熊も車には慣れているので、大抵は自らの作業に没頭している。
  ・進行方向に熊がいることに気づいた場合(50m先とか)
   路肩を熊が歩いてるとか、そういった場合は立ち止まり、熊がいなくなるのを待った。こちからから大声を出したりもしたが熊立ち退きに効果はなかった。効果があったのは乗用車のクラクション。

 1.2 熊と遭遇しないようにするには
 ・ノイズを出す
  よく歌を歌っていた。実際のところ熊対策にどれだけ寄与するのか不明だが、ストレス解消にもなるので歌うのはおすすめ。熊鈴も購入したが結局使わなかった。

 ・熊生息地でのキャンプ
   1:食事場所とテント場所を離す
    50m程度離すことが推奨されているが、これは実際の野宿ではかなり困難。せいぜい10m程度しか離せなかった。理由としてはスペースの問題が大きく、テントに適した場所を探すのに苦労するのに、更に食事にも適する場所をまた別に確保するのは至難だった。アラスカとかカナダ北部は道路から離れたら完全に原生林しかないので。
   2:食料は熊の手の届かない場所に保管する
    有料キャンプ場では熊対策用の鉄製フードロッカーが用意されているのでそこに食料をしまえばよいが野宿となると不可能である。じゃあ野宿の時どうするか?であるが木に吊るす方法は熊対策として実施するのは困難。なぜなら地面から4m、木から1.3mも離す必要があるため。アラスカやカナダ北部地域は針葉樹林なので枝が細く食料を吊るすには適さない。携行用のベアキャニスタもあるにはあるが容量が小さく比較的高価、熊出没地域を抜けてしまえば不要になるといった理由から適さない。というわけで野宿の場合食料を保管するのは苦労を伴う。そういった理由からレストエリアにある鉄製のゴミ箱をよく利用した。ゴミ箱といっても捨てるわけではなくゴミ袋の横に置くイメージ。鉄製の容器なので背面からゴミ袋交換用の蓋を開け、そこに食料を保管していた。

以下は熊出没地帯を旅していた時に心掛けていたことである。
  ・テント内で食事を絶対にしない。(匂いがつかないように)
  ・匂いの強い食品をテント内に置かない。(歯磨き粉は買わなかったし、日焼け止めは捨てた)
  ・匂いの強い食品を買わない。(サラミやハムなどの肉製品。チーズなどの乳製品)
  ・食料はゴミ箱へ収納。出来なければリス対策で木につるす。
  ・野宿地周辺に熊の足跡がないかチェック。

 


↓はこの記事を書くにあたって旅中に書いていたメモ。↑の項目に全部フィードバックしようと思ったのだけれど、めんどくさくなってきたのでそのまま載せておく。

クマ対策について考える―その実態と教訓
熊の発生する地域にはクマ対策としてテント、食事、食料保管の3ヶ所をそれぞれ別の場所に間隔を空けて設置することを推奨している。これはアラスカ地域、カナダ北部、カリフォルニア山岳地帯で共通した考えである。しかし、その間隔については差異があり、カリフォルニア山岳地帯では15feets、アラスカでは100ヤード、カナダでは50mと地域によって異なる。まぁ、離すだけ離せば安全というのは分かるのだが、実際に野営してみて、その限界に分かってきたので、書いていきたい。

実際に野宿して思ったことは取れる間隔はせいぜい10m程度であること。まず野宿場所の確保だけで難しい上にそこから更に食事をする場所、食事を保管する場所の2ヶ所が揃っている場所はかなりレアケースといって良いだろう。
食事をする場所に関しては、野宿場所に到着する前に予め別の場所で済ませてしまうと言うことも可能だが、ちゃんとした食事をしようと思うと時間がかかるし、何より寝る場所を実際に確認するまでは安心できない。

食料の保管に関しては、クマ対策用のキャニスタに食料を入れてテントとは離れた場所に置くのがベストだが(実際にPCTではキャニスタの携行が義務付けられている)容量が限られる上に高価である。アラスカ、カナダ北部を走るチャリダーは無補給地帯を走破する為に大量の食料を運ぶ必要があり、これは現実的ではない。
熊出没地域のキャンプ場ではクマ対策用のフードボックスが設置されているが、主に有料キャンプ場に限られる為、節約志向のチャリダーには不向き。と言うか北米はキャンプ料金が高くて泊まる気になれない。
では離れた場所に食料をただ置いておけば良いかというとこれには問題がある。それはリスだ。食料がハードケースに入っていない場合、かなり確率でリスに食料を食い荒らされる。分厚い布製でも簡単に食い破ってくるのが彼等の怖い所で、しかも至るところにいる。デナリ国立公園でリスが硬い樹皮をバリバリ剥がして食べている所をみて、彼等の咀嚼力が如何に強いのかを思い知らされた。
この場合の対策としてハードケースに食料を入れる、金属製の網袋に入れる等の容器強化の対策があるが、容量とコストがネック。オススメは木に吊るす事である。クマ対策として食料を木に吊るすことがあるが、実際クマ対策として有効な高さまで食料を吊るすのは自然木ではまず不可能だと思う。高さ6mで、横3mくらいのスペースが必要なのだが、どんだけ太い枝が必要なんだよと言わざるを得ない。ましてや針葉樹の多いアラスカ、カナダ北部ではそんな木を見つけることは不可能だと思われる。
だが、単純に吊るすだけならば可能であり、クマ対策としては意味はなさないが、リス対策として食料を木に吊るすことは有効である。
その他、レストエリアではクマ対策のゴミ箱が設置されており、背面から袋交換用の扉を空けて中に食料を保管することができる。
ただ、場所によってはとてつもなく汚いゴミ箱やパンパンにゴミが詰まっていることもあり使えない場合がある。